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大正時代の文化人に愛された代々木
1.高野辰之住居跡-01D 1812qr
写真1 高野辰之住居跡
2.春の小川-09D 1007q
写真2 春の小川記念碑
3.絵画:切通しの写生(道路と土手と塀)
写真3 岸田劉生の「切通しの写生(道路と土手と塀)」
4.切通しの坂-01D 0703qtc
写真4 切り通しの坂の現状
5.菱田春草終焉の地:史跡標柱-01N 1901q
写真5 菱田春草終焉の地の史跡標柱
6.田山花袋終焉の地の史跡標柱-04N 1902q
写真6 田山花袋終焉の地の史跡標柱
7.代々木公園-31D 04q
写真7 緑の多い代々木公園

その歴史を辿ると、代々木には加藤清正や彦根藩井伊家の有力武士たちの屋敷があったところで、明治神宮境内に清正の井戸(湧水)があり、彦根藩の下屋敷には代々木と言われた大樅木があったように、地勢に優れたところでした。

大名屋敷の跡地は明治時代に桑畑や茶畑になりましたが、明治末期に都心のお茶の水から八王子への鐵道(今の中央線)が敷けると、大正時代には代々木駅周辺は便利な郊外となり、詩人や画家や小説家たちが移り住み、文化人ゆかりの土地になりました。

「春の小川」の作詞者で国文学者の高野辰之は代々木に居を構えましたが、その住居跡には今も「高野」という表札のある木造の家が残っています。場所はJR代々木駅から西に歩いて10分程のところです。
(写真1)

高野辰之の旧居跡の前の道を真っ直ぐ西に進むと小さな坂があり、その坂を下った先に「春の小川」の水源池(今はマンションの下に埋まる)があり、そこから河骨川が流れ出ていました。高野辰之はその畔を散歩しながら故郷の長野県野沢の風景を思い浮かべて作詞したのでしょう。

高野辰之が見た「春の小川」は河骨川と言い、渋谷で宇田川に合流し、その後渋谷川に流れ込みます。最近、渋谷駅の南側が大開発され、その一環で渋谷川の浄化が行われた時、「春の小川」が復活したとメディアが騒ぎましたが、実は春の小川は渋谷川の支流の、また支流なのです。
(写真2)

春の小川に行き着く前に通った下り坂は、岸田劉生が描いた絵画「切通しの写生(道路と土手と塀)」(重要文化財)の坂です。土手を切り開いて造られた赤土の道、垂直に切り立った片側の赤土の土手、反対側の真新しい石垣と石塀は、当時、代々木のこの辺りが住宅地開発中だったことを物語っています。岸田劉生は、その頃、代々木の山谷町に住んでいましたから、散歩の途中にこの光景に出会ったのです。
(写真3、4)

この絵は、よく見るとディテールまで現実を精細に描いているのに、道路の消失点は高く、両側の塀と崖の消失点は低く、一致していません。奥行きを表現する消失点を二つにして道路を立ち上がるように強調したデフォルメ画は、赤土の真新しい坂道への愛着と、当時流行りのポスト印象派への強烈な異議申し立てなのでしょう。

茨城県の五浦で横山大観と共に画業に励んでいた菱田春草は、目を患って代々木に引越してきます。高野辰之の旧居跡の近くに代々木山谷小学校がありますが、その校庭の角に菱田春草終焉の地の史跡標柱が建っています。菱田春草の絵画「落葉」(重要文化財)は有名ですが、菱田春草は同じような雑木林の絵を何枚も描いていますから、当時の代々木は、まだ国木田独歩の言う武蔵野の一部だったのでしょう。
(写真5)

文化服装学院の裏通りの一隅に小説家、田山花袋終焉の地という史跡標柱が建っています。田山花袋は明治末期に代々木のこの地に居を構え、没するまで住んでいました。その場所は甲州街道に近く、高野辰之の旧居跡から遠くないところです。

田山花袋は「蒲団」「田舎教師」などの告白型小説で有名で、島崎藤村と共に自然主義文学の旗手として活躍しましたが、懺悔と小説(フィクション)との区別を知らない当時の文壇の人々から攻撃され、その後、白樺派の台頭と自然主義派の衰退で文壇の主流から離れ、晩年は静かな郊外の代々木で過ごしたと言います。

しかし、人生の真実を追究する文芸の立場からは、当時の日本の文壇では私小説の存在意義は大きく、キリスト教会的考え方に支配された西欧文学には生まれなかった独特のものでした。
(写真6)

第一次世界大戦で戦勝国となった大正時代の日本は、大正デモクラシーと言われる平和な時代を謳歌しました。そして代々木は、活躍する多くの文化人が好んで住んだ場所でした。現代の代々木も、明治神宮と代々木公園がある、都内では皇居に次いで緑の多いところです。
(写真7)
(以上)
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【2019/02/20 18:57】 | 文化 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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