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マグナムが撮った東京
マグナム・フォトス創設60周年を記念して、写真展「マグナムが撮った東京」が東京都写真美術館で開催されています(2007.3.10~5.6)。マグナムとはロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモアによって1947年に創設された写真家結社です。

展示されている写真は、マグナムのメンバーが1950年代から2005年にわたり東京を撮影したものです。展示会では、50年代は復興、60年代は成長、70年代は発展、80年代は飛躍、90年代は狂乱、2000年代は新世紀と銘打って時代区分をしていますが、展示された写真は必ずしも時代の特徴を捉えているとは言えません。

外国人であるマグナムのメンバーが短期間日本に滞在して、たまたま撮影した写真が時代特性を表現すると考えることに無理があります。マグナムの写真家達の感性が日本社会をどう捉えたか、と言う観点で鑑賞すれば十分であり、時代区分や時代特性を殊更強調する必要はないと思います。

以下では、印象的だった写真についての感想を、見た順に述べてみます。

先ず、印象的だったのはワーナー・ビショフの「銀座1951」です。ハイヒールのモダンな女性が闊歩している銀座通りにリヤカーが走り、その背景には日劇(有楽町マリオンの前身)と旧朝日新聞社ビルが見えます。ロバート・キャパが当時の日本のカメラ雑誌で「ストーリーカメラマンは頭と眼と心が機動的に働かねばならぬ」と書いていましたが、まさにその通りで、この写真は一瞬のうちに戦後間もない頃の銀座の姿を捉えています。

次に、カルティエ=ブレッソンの「歌舞伎役者、市川団十郎の葬儀1965」です。葬儀場でハンカチで涙を拭う二人の女性と横顔の二人の女性を四分割の画面に均等に配置し、真ん中には漢字で告別式という立て札を置いています。決定的瞬間を提唱したカルティエ=ブレッソンは、瞬時に画面の構成を作り上げる名人でした。日本の葬儀場で動き回る人々の群れを、悲しみの塊として表現した傑作だと思います。

第三に、バード・グリンの新年の一般参賀での「昭和天皇1961」です。皇后様と美智子妃殿下を手前に大きく入れて、国民に手を振って挨拶される昭和天皇のお姿と自然な表情を巧みに捉えています。天皇家に親しみをおぼえるスナップです。

第四に、イアン・ベリーの「東京1972」は、ラウ屋を囲む客達を写したものです。ラウ屋とは、きざみ煙草を吸うとき使う煙管(きせる)の修理屋のことで、煙管の吸口と雁首との間にある竹の管のことをラウと言ったので、彼らはそう呼ばれました。彼らは、戦前からリヤカーに煙管の掃除道具を積んで街を歩いていましたが、とうの昔に消えた商売です。写真では「らう留」という屋号のラウ屋が、袢纏を着た男と商談をしています。1970年代には、こんな街の風景もまだ残っていたのかと懐かしくなる写真です。

第五は、ブルーノ・バルベイの「成田空港建設反対デモ1971」です。デモ隊の学生達は長い竹竿を槍のように警察官たちに突きつけます。警察機動隊は沢山の楯で防ぎます。やや上方から撮った写真では、両者のせめぎ合いが緊迫感を以て伝わってきます。暴力では何事も解決せず、その後遺症で成田空港が未だに国際空港として不完全な状態にある原因を思い出させる一枚です。

第六に、リチャード・カルバーの「職を探す人々1987」は、淺草の職業安定所でたむろする、不安な表情の労働者を捉えています。豊になった今、街で見るホームレスは無気力ですが、20年前、職を求めてありつけなくても、人々には未だ気力はあります。鉢巻きをして柱にもたれる男の顔を、じっと見詰めてしまいました。

第七に、同じリチャード・カルバーの「東京1983」は、公衆電話器のあるコーナーで数人の人々が思い思いの表情で小声で電話を掛けている情景です。今は、携帯電話でバラバラに大声で電話をしています。ついこの間まであった公衆電話情景は懐かしいものになっています。

第八に、デビッド・アラン・ハービーの「東京1853」は、満員の山手線でドアに押しつけられ、ガラスに手を当て必死に耐えている通勤者の表情を捉えています。今でも屡々起きている情景ですから物珍しくはありません。20年経ても変わらないものは変わらないのかと、思い知らされる一枚でした。

その他で印象に残ったのは、技巧的構図を描いたゲオルギー・ピンカソフの数枚の写真です。影の紋様、夜の階段と探照灯など、興味ある作品です。しかし、東京というテーマからは遠くなります。

1990年代以降の写真は「狂乱」「新世紀」と時代区分されていました。確かに多くの写真は、孤独、乱雑、拡散というイメージを描いていますが、東京または日本の特徴を捉えたものなのか否か、良く理解できませんでした。現代に近づくほど情報の伝達が早くなり、世界が均質化してきて、マグナムの名手たちも、これが東京だと見分けるのに苦労しているのかもしれません。
(以上)


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【2007/04/07 07:48】 | 写真展 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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