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写真は芸術か?

近代写真の始祖と言われるマン・レイは彼の著書で次のように述べます。
「写真そのものは、現実の記録以上のものではない。そこで、写真は芸実ではないと言える・・・一般に云われる写真とは、現在から過去に結ばれるものであり、絵画は現在から未来への過程を示すものである。従って、写真がこの拘束の下にある時、作家の個性は二義的なものである」

アメリカで画家として出発し、後にフランスに渡り写真家になったマン・レイは、絵画と写真の両方の世界を知っていた芸術家です。ダダイストの画家として活躍しながら、シュールリアリズムの写真も残しています。

写真家として、印画紙に光の造形を描くレイヨグラフや、写真の白黒を反転させるソラリゼーションなどの絵画的手法を発明しました。また写真的手法を絵画に応用して絵を描きました。マン・レイは二つの世界を自由闊達に往来した芸術家です。

マン・レイに言われるまでもなく、現実の記録以上でない写真は芸術ではありません。これは自明のことです。次に、そのマン・レイが「写真は過去に結ばれるもの」という時、写真に撮影された対象物は時間の経過と共に古くなり、過去のものになると言う意味なら何ら異論はありません。しかし、画家の未来志向と対比して、「写真がこの拘束の下にある時、作家の個性は二義的なものになる」と言うと、果たしてそうか?と疑問を持ちます。

芸術家の仕事は、感動を感得し、それを再構成し、同じ感動を他者に伝達することです。文芸の世界では作家の仕事を感動の再建と言っています。小説を書くことは人生における感動を文字を使って他人に伝えられるように再建築する作業なのです。

写真家は、身辺の森羅万象の中から、感動したものを選択し撮影します。選択したものは、先ず自分が感動したものですが、撮影された写真を見る他人をも感動させるものでなければなりません。そうでなければ独りよがりです。

マン・レイが言うように、写されたものは、時と共に過去のものになりますが、勝れた写真は過去のものになっても人に感動を与えます。否、古くなれば更に強い感動を与える場合もあります。見る人に感動を与える写真は紛れもなく芸術品です。その点で絵画も写真も同じです。

マン・レイの「作家の個性は二義的なものになる」という批判を聞くと、フランス文学研究者であり文芸評論家としても活躍した桑原武夫氏が、戦後間もなく、俳句は「第二芸術」だと論じとことを連想しました。

桑原氏の俳句第二芸術論に対して、日本の伝統的詩歌の文学を理解しない暴論との反論がありましたが、桑原氏は俳句が芸術ではないと批判したのではなく、当時の俳人たちの句作は芸術性に欠けると言ったのです。同じ論法で、マン・レイは芸術性のない写真を取り上げて、写真は芸術ではなく、写真家の個性は二義的と断じたのでしょう。
(以上)


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【2007/02/07 17:52】 | 写真論 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
マン・レイの出生と活躍の場
マン・レイは、アメリカとヨーロッパを行き来して活躍しましたが、ウィキペディア(Wikipedia)によりますと、1890年ペンシルヴァニア州フィラデルフィアで生まれて、1921年7月パリに渡り、1940年戦火を避けてアメリカに移り、カリフォルニア州で過ごし、1961年パリでの活動を再開し、1976年パリで生涯を終たと書いてありました。
ウィキペディアも屡々間違いを書いているそうですから、或いは貴見が正しいのかも知れません。

マン・レイの写真家批評への意見についてご賛同頂いたことに感謝します。
【2008/04/18 11:40】 URL | wakowphoto #-[ 編集] | page top↑
マンレイはユダヤ系ロシア人
失礼ながらアメリカからフランスへ渡ったと書いておられますが、実は逆だと思いますが、僕の間違いでしょうか?

 「桑原氏は俳句が芸術ではないと批判したのではなく、当時の俳人たちの句作は芸術性に欠けると言ったのです。同じ論法で、マン・レイは芸術性のない写真を取り上げて、写真は芸術ではなく、写真家の個性は二義的と断じたのでしょう。」
 なるほど説得力のある議論でほぼ同感です。
【2008/04/18 07:19】 URL | ケイ・イシカワ #TOa2b8c2[ 編集] | page top↑
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