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波のリズムは複雑で繊細
1.冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏 葛飾北斎 q
写真1
               2.浜の模様-01D 0909q
               写真2
                              3.浜の模様-02D 0909q
                              写真3

葛飾北斎の冨嶽三十六景の中の一枚、「神奈川沖浪裏」の描写をよく見ると、大波の先端は大波と相似形の小波が沢山描かれています。これは北斎の自然観察眼の精緻さを示している例です。(写真1)

波は風が作った水のリズムですが、そのリズムは波の外面だけではなく、内面にも生じており、波のリズムは波の大小に関わりなく同じなので、自己相似形が形成されていることを北斎は見抜いたのです。

戦後、数学者ブノワ・マンデルブロが考案したフラクタル幾何学は、図形の全体とその部分とが自己相似形になっていることに着眼して、単純に見えるものの内に実は複雑さを抱えており、複雑に見えるものも本質は単純であることを説きましたが、北斎は江戸時代に既にその手法で大波の謎を描いて見せたとも云えます。

湾や入江の静かな浜辺を歩いていると、潮の退いた砂浜の上に細かな波の紋様を見ることがあります。それは、静かに寄せては返す細波(さざなみ)のリズムの足跡です。足跡の一つ一つは似た形ですが、よく観察すると微妙な変化を伴った足跡です。

寄せる波も返す波も、浅瀬になると浜の底からの反動で波形が変わり一律ではなくなります。その波の力が浜の底の砂や土を押上げたり削ったりします。潮が退いた後に砂浜に残る軌跡は、細波の複雑な運動の足跡なのです。それが時には大きく変形することもあります。

教育哲学者として有名な J.デュウイーはその著書「経験としての芸術」で美的秩序を次のように説明しています。
「律動(rhythm)は常に変差(variation)を伴っている。なぜなら律動とは力(energy)が秩序立った変差を以って現われたものだからである。この変差は秩序と同様に重要であるばかりでなく、美的秩序に必ず件う不可欠の要素である。秩序が維持されている眼り、変差が大きければ大きいほどその結果は面白い」と。

写真2と3は東京湾の内奥の葛西海浜公園で見つけた海砂の紋様です。波の律動は微妙な変化を伴いながらも足跡に秩序を維持しています(写真2)。しかし、場合によっては細波の律動が足跡の形を大きく変えることもあります(写真3)。

葛飾北斎が見た波の律動は複雑で力強いものですが、浜の細波の律動は複雑で繊細です。北斎は動いている水の状態で見届けましたが、私は砂浜にプリントされた状態で発見しました。
(以上)
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【2009/11/14 12:59】 | 芸術 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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