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ユニバーサルデザインはユニバーサルになった
一昔前、ユニバーサルデザインという言葉が流行りました。この言葉は、もともと身体障害者のために考案されたデザインを指していました。

身体障害者は健常者用のデザインでは使いにくいので、特別に工夫されたデザインを提供しようとした運動がユニバーサルデザイン運動でした(米のロナルド・メイス博士の提唱)。

しかし身体障害者用に開発されたデザインは、健常者にも便利なものもありました。身体障害者だけに売れる製品では市場が限られていますが、健常者にも愛好されるとなれば、その製品の市場は大きくなります。そうなれば身体障害者用の製品の値段も安くなります。

こうしてユニバーサルデザインは社会に定着してきました。今は、身障者用のデザインだと云って殊更宣伝する必要もなくなったのでしょう。特別なものとして意識されなくなったことは結構なことです。

しかし、ユニバーサルデザインは、みんなが使い易く、かつ、安く入手できるとなると、広く普及して、デザインの画一化現象が起こります。誰も彼もユニバーサルデザインです。

すると、人は他人と違ったデザインを持ちたがります。ユニバーサルデザインは個性的でなく面白くないと言い始めます。値段は高くてもユニークなデザインを欲しくなります。それはファッションの世界です。大いに個性を発揮したら良いのです。

身体障害者用に開発されたユニバーサルデザインは、当初は一般の製品とは異なった形をしていました。格好よいか否かは別にして、その製品はユニークでした。ユニバーサルデザインが字義通りにユニバーサルになると、そのユニークさが消えます。

この皮肉な逆転劇は、何も身障者用のユニバーサルデザイン製品にだけ生じるものではありません。

近代建築の父と言われたル・コルビュジェは合理性を追求してピロティという柱の上に家を建てる様式を考案しました。それまでは地面に建てていた家が空中に浮いたので奇抜な設計でした。亜熱帯地方では高床式の家は珍しくありませんが、北半球の欧米ではユニークでした。

その様式は、忽ち広く受け入れられて西洋式の高床式建築は世界的に普及しました。何しろ空中に浮かして家を建てるのですから、どのような地形の土地にも容易に安く家を建てることが出来ました。今では、地上階を駐車場にするため都会のマンションまでピロティ方式を採用するほど普及しました。

もう一つ、北欧家具のイケアの例を挙げましょう。スエーデン南部の町、エルムフルートで誕生したイケアの家具は、シンプルなデザインと低価格で、先ずヨーロッパ市場に進出し、次いでアメリカ、ロシア、中国と広大な市場を席巻しつつあります。次にはインド市場を狙っています。

イケアは身体障害者用の家具としてスタートしたわけではありませんが、先ず大衆向けに製品価格を設定して、それが実現できる家具を組立方式でデザインするのだそうです。正にユニバーサルデザインそのものの発想です。

この発想の難点は、ユニバーサルデザインは普及すればする程、やがて厭きられることです。しかし、身体障害者ではありませんが経済的弱者である一般大衆にとっては有り難いユニバーサル・デザインです。
(以上)
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【2009/07/07 12:03】 | デザインする | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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