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木村 伊兵衛の写真
山本夏彦氏は、日常の平凡な事象を素材にして、人間と時代の本質を簡潔に表現した評論家です。氏は書いています。
「人生は些事から成る。些事を通して大事に至るより外に、大事を理解する術はない」と。

私は、この言葉で写真家木村伊兵衛を思い出します。
木村伊兵衛は土門拳とともに日本のリアリズム写真運動を推進した写真家として有名です。二人は同じくリアリズム写真家と言っても、作品も撮影手法も大きく異なっていたと云われます。

土門拳が力強くダイナミックな写真を撮った写真家なら、木村伊兵衛は軽快でさりげない情景を撮影した写真家と云われます。映画の世界で黒澤明と小津安二郎の両監督が動と静として対照的に評価されているのに似ています。

周囲の日常的な情景をさりげなく撮影して、木村伊兵衛は云ったそうです。
「五十年、百年後に見られるような写真を撮りたい」と。

記念碑的な風景は五十年後、百年後にも実物が残っている可能性が大きいですが、平凡な日常情景は大抵変化し消えてなくなります。ですからその時には誰も昔の日常情景を見ることは出来ません。

だからと云って、日常的な情景なら何処でも何でもよい分けではありません。弟子だった田沼武能氏(日本写真家協会会長)はある雑誌に書いていました。
「木村伊兵衛の写真には、その場の空気、人物の呼吸が写っている。それも「居合い抜き」のような早業で撮ってしまう」と。

撮影に当たっては、木村伊兵衛は構えることなく撮ることをを尊重しましたが、これは何処か俳句や川柳の精神に通じます。芭蕉は後年「かるみ」を大事にしましたし、川柳では「かるみ」をその三要素の一つにしています。

軽快なタッチで記録する時代の語り部は、日常的な情景の中から未来に語り継ぐのに相応しい対象を選んで描いてくれました。
(以上)


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【2006/06/12 09:58】 | 写真論 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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