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写真展「イマジネーション 視覚と知覚を超える旅」を見て
東京都写真美術館では、いま意欲的な企画展が開催されています。その一つに「イマジネーション 視覚と知覚を超える旅」があります。(2008.12.20~2009.2.15)

この展示会は、色々な映像表現を訪ねてその神秘を解く旅に喩えられます。展示内容は極めて多岐に亘りますので、ここでは不思議な動画の展示物1点だけを取り上げます。それは、牧野貴氏の作品「Still in Cosmos」です。

その動画には、私達が日常見ている映像は一つもありません。作者は流れ続ける「混沌(chaos)」が「宇宙(cosmos)」であると主張するのです。

哲学や宗教などでは宇宙とは秩序をもつ完結した世界体系のことですから、動画のタイトルが「Still in Cosmos」というのは、「私達はずっと以前から秩序ある世界にいる」という意味です。

作者の説明を詳しく述べる前に、動画の印象を述べましょう。その映像は、喩えて云えば、水の流れる表面のような映像、無数の小鳥たちが群舞するような映像、洞窟から無数のコウモリが湧き出してくるような映像です。

猛烈な速さで、大きな粒子、小さな粒子が入り乱れて流れています。その粒子はグレー、緑、青、黄などの薄い色彩を帯びて飛び交います。時々、鋭い直線の閃光が流れてアクセントを付けます。小鳥の鳴き声のような音声が時々鳴ります。

これで何を意味するのか?
作者は次のように解説します。

カオスとは混沌ではなく、「もの」それ自体に名前がない無の状態を指す。
駕籠から出た鳥にとって外界はカオスである。
地球上に存在する生物は自らの意志により生まれるのではなく、気付いたらカオスの中にいる。存在は cosmos を造り出すことにより無意味、恐怖を克服する。

熱力学の理論にエントロピー増大の法則と云うのがありますが、この法則を社会に適用すると、社会は手当てをしないで放置しておくと乱雑になり秩序を失っていく、即ち混沌に近づいていきます。そのことをエントロピーは増大すると云います。

牧野貴氏は、宇宙には最初から厳然たる秩序が存在するのだが、未熟な私達はその秩序を認識できない。宇宙を学び親しんでいけば、やがて宇宙の秩序が見えてくると。私達の意識が目覚めるに連れて、宇宙のエントロピーは減少すると云うのです。熱力学とは正に逆の現象が起きると云うのです。

評論家の立花隆は、「臨死体験」という著書で一旦死んだとされた人が蘇生して意識を回復したとき語った記録を書いています。臨死体験者は暗いトンネルと潜ると、その先にまぶしいばかりの明るい世界が広がっているが、それは形容しがたい景色であると云っています。

死者が最初に見る死後の世界の映像は正に混沌としているのでしょう。それは未知の世界だからです。この世に生まれた赤子の目に映る物質の世界も又混沌としているでしょう。それらの混沌は、やがて赤子の目にも秩序だった世界に変わっていきます。

牧野貴氏の動画は、この世とあの世の、あの世とこの世の境界線の光景を描いているのです。
(以上)
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【2009/01/22 11:44】 | 写真展 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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