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ランドスケープ 柴田敏雄展
東京都写真美術館で写真家柴田敏雄の最初の個展「ランドスケープ」が開催されています。(2008.12.13~2009.2.8)

柴田敏雄氏は色々な意味で異色の写真家です。
先ず、写真の被写体の多くがコンクリート製のダムや擁壁であることです。このような人工物は、それが社会経済的に何らかの意味を持つものとして被写体となることはあっても、それだけを写真の主題として登場させ、その存在を考えさせた写真家は今までありませんでした。

次に、展示される写真が全て大画面であることです。大自然や大都会を一望する写真を撮るなら大画面も必要ですが、コンクリート工作物の一部を切り取るのに大画面を用いる必要はないのに、敢えてそれに拘っています。

最近の写真展で内容よりも画面の大きさで写真を強調しようとして空騒ぎに終わっているケースをよく見かけますが、柴田氏の写真にはそのような空虚さはありません。それはディテールに拘る故の大画面だからです。

第三に、柴田氏は最近でこそカラーの作品を発表していますが、それ以前の写真は全てモノクロです。自然が対象のときはカラー表現が有効ですが、人工的工作物が被写体のときはモノクロ表現の方が雄弁です。

柴田氏は東京芸大で油絵を学び、海外留学で写真に転じ、現代美術の世界に入りました。その転進の理由を問われて「写真は手で描かずともイメージが創れるから」と答えています。近代写真の始祖マン・レイが写真機を絵筆にして「美」を求めたのと同じです。

以下に興味を持った作品について論評していきます。

何故コンクリートに注目したかと問われて、山肌のコンクリート・カバーが有機的に見えたからと答えました。最初の写真ではガードレールまでも造形化しています(作品1)。

コンクリートだけでなくブリキのガードレールまでも積極的に被写体の取り入れた写真は、この外にもあります(作品2、15)。自然の中に人工物が入ると自然が破壊されたと感じるのが普通ですが、柴田氏は自然の中の人工物でも有益、有用なものなら、そこに形の美を求めています。

今回の写真展には展示されていませんが、嘗て柴田氏は多摩ニュータウンの開発段階の光景を撮影していました。住宅団地として多摩丘陵が切り刻まれ、地形が変わり赤土の土壌が露わになった写真を見て、当時の写真評論家達は自然破壊を告発する写真だと論じていました。

しかし、有用な存在に価値を認める柴田氏は、逆に、この風景の変わりゆく大地に生命の息吹を感じて撮影したのだと思います。環境論者のような特定の価値観に煩わされることなく、自然の中に構築される人工物を美的観点から撮影する態度は全ての作品に共通しています。

自然論者や環境論者は観念でものを云いますが、柴田氏は美醜の感性で判断します。評論家は屡々観念が先行して、感性は観念に左右されて美醜の感性が働きません。柴田氏は廃墟より今生きているもの、古いものより出来たばかりのものに興味があると云います。

山の斜面に造られた土砂止めの擁壁には色々な形態があり、その表面には多様な紋様ができています。柴田氏は、巧まずして築かれた造形の美しさを発見し、切り取り、構成する作業を丹念に進めています(作品13、15、46)。ダム・シリーズでもダムの造形美を捉えています(作品47、48、49、50、51)。

柴田氏の造形美の追求は、やがて抽象画のような作品に至ります。ジグザクした水路(作品60)、ワシントン州のグランドクーリーダム(作品64、65、66)にその意図が強く表れます。ワシントン州クーリジダムの部分を撮影した写真は抽象画そのものです。

絵画の世界では具象を追求していくと抽象に至ると云われますが、写真でもそれが可能かと思いました。

最後に、柴田氏はモノクロの諧調では表現できない被写体には積極的にカラーで撮影していくとのことですが、やはり人工物の表現にはモノクロが魅力的です。但し、自然の色彩がコンクリートの白と響き合うときにはカラー写真も威力を発揮します。

その好例を青森県黒岩市のダム建設現場(作品2)に見ます。ねずみ色の砂礫と茶色の土と黒っぽい水面との中で、真っ白なコンクリート擁壁が映えています。

展示会に行かない人に長々と作品批評しても余り興味が湧かないです。さりとて許可無く作者の作品を掲載することも出来ません。展示会の作品に比すべくもない稚拙な写真ですが、偶々私が撮影したコンクリート擁護壁の写真をご参考までに掲げます。
(以上)

                         雪紋様:車窓-03P 99qt
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【2008/12/22 11:17】 | 写真展 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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