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写真展ヴィジョンズ・オブ・アメリカ第二部「わが祖国」を見て
第一部「星条旗 1839~1917」に続く第二部「わが祖国 1918~1961」は、第一次世界大戦に勝利したアメリカが、その勝利を背景にして経済的にも欧州諸国を凌駕した時代から、第二次世界大戦にも西欧諸国の盟主として戦い、戦後は米ソの冷戦を続けた時代までの間です。近代アメリカ史上、激動の期間です。

第一次世界大戦後、欧州の疲弊を尻目にアメリカ産業は大いに発展を遂げ、世界の資本主義経済の牽引者となりますが、1929年に起きた世界大恐慌で、産業は崩壊し、経済は大混乱に陥ります。景気回復のため採った需要喚起政策、ニューディール政策もなかなか効果が上がらないうちに、第二次世界大戦が始まり、さすがの大恐慌の傷跡も戦争のお陰で癒えます。1945年に第二次世界大戦が終わるや、間もなく米ソの間に対立が生じて冷戦と言われる軍事的対立が1989年まで続きます。

今回の写真展「わが祖国」は、この約40年間のアメリカの激動を撮り続けた写真家たちの記録です。第一部「星条旗」が建国の苦難を描いたところに強い印象を受けましたが、「わが祖国」は激動の時代を描くアメリカ写真の表現力に注目しました。

展示は三編に分かれています。第一編はアメリカのモダニズム、第二編はグラフ誌の黄金時代、第三編はドキュメンタリ写真です。

第一編アメリカのモダニズムの写真では、アメリカの写真家が写真表現で独自の道を切り開いていく様子が分かります。それは、アメリカ近代写真の父と言われるスティーグリッツが主導した、ピクトリアリズムから離れて、対象物に迫るストレート写真へと歩む道です。

ベレニス・アボットの「変わりゆくニューヨーク」には、1930年代のニューヨーク市街には未だ高層ビルと低層ビルが混在している様が克明に写されています。人工的なビルの街もストレートに撮ると美しく見えます。
また、エドワード・ウェストンの「ジュニパー、テナヤ湖」は樹木の肌を細密に描写すると共に造形の本質に迫る写真です。同じ作家の有名な「ピーマン」も日常見慣れた食物に造形の美を発見する写真です。
アンセル・アダムズのヨセミテ渓谷の写真「月の出」「月とハーフドム」などは、ストレート手法を大自然に向けたものです。普通に見ていては見えない美を発見した写真です。

第二編グラフ誌の黄金時代は、1936年「ライフ」誌の創刊に始まります。アメリカ写真がその真価を発揮した分野であり、写真界に新しい世界を開いた時代です。更に云えばフォトジャーナリズムを芸術にまで引き上げた時代です。

有名なロバート・キャパの「ノルマンディ海岸」は偶然、ブレ、アレ、ボケの表現になりましたが、如何なる状況でも写し留める写真の本性を示すものです。
カール・マイダンスの「法廷で証言する東条英機元首相」、ユージン・スミスの「ハリー・トルーマン」などの人物写真の性格描写も写真だけが出来る表現力です。裁かれる東条英機は堂々としており、裁く側のトルーマンが卑しく見えるのは、私が日本人だからでしょうか?

第三編ドキュメンタリ写真はアメリカ報道写真の始まりとなりました。それが大不況から脱却するニューディール政策を推進していた連邦政府からの依頼によって始まったということが面白いところです。

ウオーカー・エヴァンスの「小作人 アラバマ」、ベン・シャーンの「マルホーク家 小作農」「堤防を築く労働者たち ルイジアナ」、ドロシア・ラングの「重量を量るために畑の縁に並ぶ豆摘み労働者たち カリフォルニア」「プランテーションへ向かう綿摘み労働者たち」は、大恐慌で苦しむ農民たちの生活を写したものです。1930年代の中西部のアメリカ農村の荒廃を描いたジョン・スタインベックの小説「怒りの葡萄」を絵にして見せたような写真です。

以上取り上げた写真以外にも、産業化する社会を直視した工場や機械を対象とした写真、拡大する消費経済の一面を広告という形で捉えたファッションの写真など、「わが祖国」が対象とした40年間には新しい分野の写真が沢山生まれました。歴史の短い東京都写真美術館が、これだけ厖大な写真を収集していることに改めて感心しました。

最後に苦言ですが、確か第二部「わが祖国」第三編のアメリカ・ソシアル・ドキュメンタリーの写真は、第一部「星条旗」でも取り上げていたと思います。展示された写真に重複はないと思いますが、同じ時期のものは同じ展示会に括って欲しいものです。同じ疑問はアンセル・アダムズのヨセミテ渓谷の写真展示についてもあります。

これが展示方法のミスでないなら、同じ時代の同類の写真を第一部と第二部にわけた理由を知りたいと思います。
(以上)
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【2008/10/02 10:07】 | 写真展 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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