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写真展ヴィジョンズ・オブ・アメリカ第一部「星条旗」を見て
東京都写真美術館では「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」写真展が開催されています。

第一部「星条旗 1839~1917」(開催期間 7.5~8.24)、第二部「我が祖国 1918~1961」(同8.30~10.19)、第三部「アメリカン・メガミックス 1957~1987」(同10.25~12.7)の三部からなる大規模な展覧会です。

この写真展は東京都写真美術館収蔵展と銘打っており、日本の写真美術館の写真収蔵力と展示表現力を示す格好の写真展となっています。

まだ第一部「星条旗」を見た第一印象ですが、開館(1995)して未だ日の浅い東京都写真美術館にしては、充実したアメリカ写真展を実現した思います。

ヨーロッパで発明された写真は、アメリカ社会の体質に合っていたのか逸早く受け入れられ、ヨーロパよりもダイナミックな発展を遂げたと思います。写真展「星条旗」を見ていると、そのアメリカ写真の歴史が良く分かります。

第一部の題名となった「星条旗」はアメリカの国旗であり、アメリカの国歌です。アメリカ国歌「星条旗」の歌詞は、アメリカがイギリスから独立した戦争の勝利を讃えたものです。

その後、アメリカの独立を脅かす危機が訪れます。それはアメリカを南北に分断する恐れのある南北戦争でした。独立して間もないアメリカが南北に分裂すれば、弱体化した南北アメリカは旧大陸からの内政干渉を受けて再び独立が危うくなります。

写真展第一部は、南北戦争のドキュメンタリー写真のスライド映写から始まります。これらのスライド写真は、北軍が25人の写真隊を従軍させて撮影したものです。軍の行動記録を撮る目的でしたが、写真は戦場の悲惨さを余すところなく伝えています。兵士の死体が戦場に散在している「死の収穫」(ゲティスバーク)は、これ一枚で61万人の戦死者を出した南北戦争のすべてを語っています。

南北戦争の英雄リンカーン大統領は、日本では奴隷解放で有名ですが、アメリカでは祖国の分断を防ぎ、国家統一を果たしたことで尊敬されています。その意味で、南北戦争は第二の独立戦争でした。これらのドキュメンタリー写真はアメリカ人に、独立の有り難さを思い起こさせる貴重な記録なのです。

アメリカは、西部へのフロンティア開拓のために地図を必要としました。オサリバン、ワトキンズ、ジャクソンなどの写真家は、地形や地質を記録するため盛んに西部の各地の写真を撮りました。

写真家たちは、その中で風景としての美しさを捉えていきます。こうして、アメリカの風景写真は軍事的実用性の中から生まれてきたのです。後世、ヨセミテ渓谷の美しさを世界に伝えたアンセル・アダムズよりずっと昔に、ヨセミテのハーフドームは彼らのカメラに収まっています。

1929年の大恐慌の後アメリカの経済社会は混乱と疲弊を続けますが、連邦政府は写真を用いて社会政策の必要性を人々に説いていきます。政府の要請で社会の暗部を次々と撮影したのはアメリカ・ソシアル・ドキュメンタリーと言われる写真家達でした。

しかし、アメリカ・ソシアル・ドキュメンタリーの写真家たちは失業者、児童労働、貧民街、貧農などの悲惨な現象を撮影しながらも、L.W.ハインなどはその中に造形的な美しさを込めるようになります。そうすることで即物的な悲惨さは更に印象的になるからです。

こうして見てくると、アメリカの写真は常に軍事、開拓、社会問題という実社会と向き合って発展してきたことが分かります。その頃、ヨーロッパから帰米したスティーグリッツはアメリカ的な写真芸術を追究し、近代写真の父と言われますが、作品「三等船室」「駅馬車の終点」などに見るように、アメリカの現実社会を直視する姿勢は、アメリカ写真の伝統に忠実でした。

第一部を見て、第二部、第三部が待ち遠しくなる写真展でした。
(以上)
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【2008/08/12 09:54】 | 写真展 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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