FC2ブログ
オイルショックからバブルの時代の写真史

昭和の写真、第三部「高度成長期」(「高度成長期の写真史」07.10.9)の続きものとして、第四部「オイルショックからバブルへ」が東京都写真美術館で開催されています(開催期間07.10.20~12.9)。

昭和47年(1973)に起きたオイルショックは世界経済に大打撃を与え、日本経済の高度成長にとどめを刺しました。その後、長く低成長を続けた日本経済は、昭和61年(1986)から平成3年(1991)までの約5年間、土地投機による未曾有の好景気に沸きます。世に言うバブル経済の時代です。

今回の写真展では、ドラマティックに下降し上昇する日本の社会を、多彩な写真で語っています。写真展のテーマは「崩れゆく風景」「内向する風景」「変容する風景」に分かれています。第一と第二のテーマは昭和50年代を、第三のテーマは昭和60年代を取り上げています。

先ず昭和50年代について述べますと、突然襲ったオイルショックは、高度成長で長く走り続け、疲れが溜まった社会と人々を一気に突き落とします。それに取り残された寂しい姿は、社会のあちこちにありました。

「崩れゆく風景」のテーマに忠実なのは、外壁をセメント塗りした古びた安アパート(石内都)、消えゆく農村のスナップ(大島洋)です。正に崩れゆく風景で、時代の変化を記録しています。
ここで「風姿花伝」(須田一政)を取り上げたのは場所違いのように思います。伝統様式は崩れずに伝わります。
しかし、崩れゆく風景には当たりませんが、生まれくる風景を写した群衆「砂を数える」(土田ヒロミ)は、この時代の社会状況の変化を的確に捉えています。

「内向する風景」は、急激な下降を続ける昭和50年代に、写真家が内なる風景に何を見たかがテーマです。ここに展示された写真は多岐にわたり、この時代に写真家たちが各自の関心あるもの撮影したものです。しかし、これらの写真が何故50年代の心象風景と言えるのか、私には理解できませんでした。原因は写真家にあるよりも編集者にあるのかも知れません。
ただ一つ、街行く人々の顔をクローズアップしてスナップした「東京」「人へ」「街」の所謂ストリートスナップ(山内道夫)は、背景と併せて人々の顔の表情に時代を反映していて大変面白かったと思います。

昭和60年代のバブルを捉えた「変容する風景」は、テーマにピタリの素晴らしい写真が沢山ありました。

「ランドスケープ」(小林のりお)は、郊外に開発される大規模な住宅地を大画面で捉えて、バブルを具象化して見せました。大規模開発はバブル以前から行われていたのですが、時期は問題ではありません。バブルを映像にしたことが新鮮です。このような風景写真は写真ではないと考えていた観念をひくり返した所が手柄です。

「IN TOKYO」(伊奈英次)の視点も新鮮です。これらの作品は、六本木、水道橋という既存の都市中心部が高層ビル群の谷間に沈没して行く様を描いて秀逸です。これがバブルの都市現象であると教えてくれます。

「建築の黙示録」(宮本隆司)はバブルの裏側で生起していること記録した写真です。バブルは、人々が慣れ親しんだ建物を壊していきます。バブルで破壊されるのは、劇場、体育館、刑務所など、使われなくなる古いものです。災害による突然の破壊でなく、人手による計画的な破壊は、消えゆくものへの哀惜を一入強く感じさせます。

更に、バブルは、遠いところで自然を破壊しています。「ライムヒルズ」(畠山直哉)はセメントの原料である石灰岩の採掘現場を大画面で捉えています。バブルはビルを建て街を造りかえますが、その建設の裏にもう一つの破壊があることを示す写真です。

最後に、「軍艦島ー捨てられた島の風景ー」(雑賀雄二)は素晴らしい写真ですが、バブルが廃墟をもたらした例としては不適切です。軍艦島が廃墟となった原因は、エネルギー源が石炭から石油に変わったためであり、バブル発生のずっと前、昭和49年に炭坑は閉鎖されました。連想としても繋がりません。

写真展で時代史を編集することは、かなり難しい仕事だと思います。写真家たちは夫々の関心と感性で撮影します。時代史の編集は、その中から時代区分に相応しい作品を発見し分類するのですが、その際、写真の素晴らしさに負けて時代史とはかけ離れた解釈をすることがあります。

それでも、個々の作家を越えて時代に共通する潮流を見定めて、作品を評価する作業は大いに意味あることですし、観賞する人達にも写真への理解を容易にする役割を果たします。
大変勉強になりました。
(以上)
スポンサーサイト



【2007/11/20 10:32】 | 写真展 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<稲田が作る風景 | ホーム | 美を感ずる時>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://wakowphoto.blog61.fc2.com/tb.php/116-b4cf0296
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |