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長い影の季節に思う
                       人影-33P 96tc
                       人影-37P 96tc
                    落葉-01P 94tc

秋深くなると、木々の影は長くなります。道行く人々の影も長くなります。

暗い日陰が多くなると、太陽の当るところが目立ちます。明るさで隠されていたところが改めて表に現れます。

濃淡が混ざり合う光景は複雑になります。見えないものが見えてくるだけでなく、複雑な新しいものが見えてきます。

写真家は、順光より斜光を、斜光より逆光を好みます。それは光景が複雑になり、見えないものが見え、更には新しいものが見えてくるからです。

晩秋から冬にかけて、風景は写真の写りがよくなるのです。自然だけでなく、人間も写真写りが良くなります。

下手な腕で撮られても、フォトジェニックな自分を発見するでしょう。
(以上)
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【2011/11/23 16:23】 | 写真論 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
雲は巧まざる造形家
     1.雲-23D 1109q
                  2.雲-26D 1109q
                               3.雲-20D 1109q
                                       4.雲-17D 1109q
                               5.雲-41D 1109q
                 6.雲-46D 1109q
     7.熱海邸の雲-01D 1109q


戦後間もなく米山正夫が歌ってヒットした「想い出は雲に似て」という流行歌がありました。その歌詞は次のようなものです。

想い出は想い出は 流れゆく雲か
浮かびては消えてゆく 青空の彼方
はるかに遠き日を 呼び返すごと
群れとぶよ群れとぶよ 夢の数かず

これは過去の想い出を雲に託して懐かしむものですが、未来への希望を雲に喩えた言葉として司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」が有名です。明治維新を成し遂げた明治人が坂の上の雲を目指して近代国家の建設に邁進した様を表わした言葉です。また唐代初期の詩人、王勃は彼の詩のなかで「青雲之志」と言う言葉で、徳を磨き立派な人物になれと人生の未来を説きました。

青空での雲の姿は、人々の心に感情移入して、慰めとなったり、励ましともなるものですが、他方では雲は青空のキャンパスに自由奔放な絵を描いて、人々の美的感覚を刺激する画家でもあります。

雲が造形の天才であることを人々に知らしめたのは、アメリカの近代写真の父と言われるアルフレッド・スティーグリッツです。それまでは誰も雲だけを被写体に選んだ写真は撮っていませんでしたが、スティーグリッツは大空の雲の変容を撮った連作で、雲の美しさを人々に教えたのです。

その切っ掛けは面白いのですが、彼は歳の離れた美人の画家オキーフと結婚し、その美しい妻を被写体にした作品を次々発表して名声を博していましたが、そのことで、人々はスティーグリッツの成功は写真の巧さではなく、オキーフの美しさにあると彼を批評しました。それではと言うので彼は大空の雲を被写体に選んで一連の作品を発表して名声を確かなものにしたのです。

初期のスティーグリッツの名作「冬の駅馬者」にしても、当時の写真家たちが被写体と考えなかった鉄道馬車の終着駅の光景を、スティーグリッツは立派な作品に仕立て上げています。スティーグリッツは、終着駅で働く人々や馬たちの錯綜する光景の中に、人間の感情や思想を発見したのです。

スティーグリッツにとっては、雲は大気中に塊となって浮かぶ単なる水滴ではなく、人間の情念の塊に見えたのでしょう。雲は絶え間なく変わる人々の感情の表現と見たのでしょう。妻オキーフの中に見た感情を雲の振る舞いに見たのでしょう。

青空に浮かぶ雲の姿形の変化には、人間の想像を超える巧みさがあり、人間が描けない美しさがあります。写真家スティーグリッツは、雲の巧みさ、美しさを捉えましたが、それを真似ようとしても、普通の写真家には真似られることではありませんでした。

冒頭の写真は、私が今秋に熱海付近で撮った真似事の雲の写真です。
(以上)
 
【2011/11/15 11:22】 | デザインする | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
柿は見て良し食べて良し
                    1.干し柿-03P 97rc
                    写真1
                       2.柿の木-04P 97tc
                       写真2
                    3.柿-07P 89tc
                    写真3
日本の秋は果物の季節です。秋の代表的な果物には梨、葡萄、柿、林檎があります。これらの果物は、陽が照る時間が次第に短くなり気温が徐々に低下する秋の頃になると、甘みを増していきます。

果物は夫々舌触りや歯ごたえが異なりますが、主たる特徴は味の違いにあります。梨の淡泊でさわやかな味、葡萄の果汁溢れる果肉、柿の濃厚で深みのある甘み、林檎の酸味と甘味が程よく混ざった味、これらが人々の味覚に訴えるので、人々はその味覚で果物を記憶します。

中でも日本の柿の濃厚な甘みは独特なものであり、私たちは柿と言うと直ぐに甘い物と考えます。古来「甘い」ものは「旨い」ものと同義でしたから、砂糖など存在しなかった時代には柿は大いに珍重されました。近年は外国人の間でも日本の柿は大いに人気がある果物だそうです。

柿は中国から伝わったと言う人もいますが、縄文時代には既に日本にあったとも言われていて、近世に日本からヨーロパに伝わったこともあって、世界では柿は日本原産と扱われています。ですから、英語では柿のことを a Japanese persimmon と言い、また日本語がそのまま使われて kaki とも言います。

もともと存在していた柿の種類は渋柿だけでしたが、ある時、突然変異して甘柿が生まれたと言われます。ですから昔は、柿は渋抜きしなければ食べられなかったので、柿を干して食べる方法は相当昔から知られていたと思われます。では、甘柿を干せば尚甘くなるかと言えば、そうはならないのです。柿の甘さは甘柿より渋柿の方が強いので、干柿は渋柿に限るそうです。

また、干柿は酸っぱい果物だけが持つビタミンCを豊富に含んでいますから、風邪を引いたときに食べると良いそうです。渋柿は乾燥させると、渋みのもとのタンニンが固まり食べても渋くなくなりますが、同時に水分を失うので果肉は堅くなります。そこで硫黄で燻蒸すると干し柿にしても柔らさを保ちます。これが「あんぽ柿」です。ジューシーな干柿として人気があります。

秋の農村を訪れると、あちこちの農家の軒下に皮を剥いた柿が、縄にくくられて沢山吊してあります。干柿は、晩秋の乾いた空気に曝さらされて、日一日と甘さを増していきます。一列に並んだ赤い干柿が、陽の光で障子戸に影を映している風景は、この時期の農村風景の一齣です。
(写真1)

見て美しいのは軒の下に吊された干柿だけではありません。収穫される前の渋柿が、広がる枝いっぱいに成り下がる光景も見事です。柿の木は葉が落ちても実だけが残る珍しい木です。桜の木が葉の生える前に咲いて花の美しさを誇るように、柿の木は葉の落ちた後に実だけ残して実の美しさを誇ります。(写真2)

その沢山の柿の実に夕日が当ると、赤い柿の実は朱色に変わります。有田焼の柿右衛門は、この朱色を見て有名な柿右衛門様式を焼上げたのでしょう。(写真3)
(以上)
【2011/11/07 18:34】 | 風景 | トラックバック(0) | コメント(3) | page top↑
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